栁川かおり
医師/料理家
今年の夏は我が家のお庭のトマトが豊作でした。それもとっても甘い! 美味しそうなフルーツトマトの品種の苗を選んだというのもあるけれど、お店で売っているトマトと変わりないくらい美味しいよねー! って。我が家はみんなで自画自賛していました。
引っ越してから4年目の夏。お庭作りも同時にスタートしたけれど、1年目のトマトは全然甘くなく、かなりがっくりしたもの。それが年々少しずつ土もよくなってきたようでミミズもたくさん出てくる。野菜のおいしさは品種だけじゃない。土や水、日当たりや気温、風や湿度も全部かかわってくる。その土地で美味しくなるにはそれなりに訳があるはずだと、改めて気が付いた夏でした。
そんな風に思ったきっかけは、サルタナレーズン。
普段よく見かけるカリフォルニアレーズンに比べると、色が薄くて少し緑がかった印象。ぶどうの品種が違うのだと思っていたけれど、実は同じだったというのに驚きました。
じゃあ、この違いはどこから? 栽培から収穫、天日干しの過程での気候が違うからだそう。土や気温だけじゃなく、雨の量や日照時間でも甘さや酸味が変わるのだとか。カリフォルニアの方が期間を長くかけてしっかり乾燥させるのでより濃い色でしっかりとした食感に。それに比べるとサルタナは実が柔らかくて甘さがすっきり。ぶどう本来の酸味や香りが感じられるという特徴が出る。
そういう違いがわかると、自分の好みに合わせて選ぶ楽しさが増える。レーズンは今までお菓子やパン作りに使うことが多かったけれど、サルタナレーズンなら、料理にも取り入れやすい気がするのです。
よく作るかぼちゃとクリームチーズのサラダ。
かぼちゃにクリームチーズとハム。半分ヨーグルト入りのマヨネーズで和える。ここに入れるレーズンも、少し酸味の残るサルタナなら、よりさっぱりすっきりした味わいに。
チキンソテーには、軽く刻んで砕いたアーモンドと一緒にソースにしてみる。お砂糖を使わずにレーズンの甘さで味付けするのです。いつもははちみつやみりんを入れていたけれど、醤油を入れるだけで十分。程よく自然の甘さのついたソースになった。
レーズンを選ぶ楽しさは、料理の幅が広がる楽しさにもなりました。
2児のママ。出産を機に2011年より料理ブログを開始。シンプルな料理をより美味しく!をモットーに、まいにち食べても飽きないような「おうちごはん」を目指す。2012年日本テレビ系「ヒルナンデス!」内の史上最大の家庭料理コンテスト「レシピの女王シーズン2」にて優勝し、初のレシピ本を出版。
和食料理人である父の影響により、幼少から実家店舗で料理の基礎を学び、現在も料理家の仕事と両立して和食料理店に立ち腕をふるう。食に関する9つの資格を有しており、企業のレシピ開発やTVなどのメディアでも活躍中。トライアスロンの国内大会では年代別優勝するほどの実力で「食✕スポーツ」の普及活動も精力的に行っている。