近頃は、食べる油だけではなく、皮膚に塗る油や香りを楽しむ油が注目を集めています。これらの油には2種類あり、植物などの天然物から直接取り出す油(油脂)と天然物から油に溶ける成分を取り出す精油とがあります。
精油の方は、抽出量が少なく、そのままでは信じられないくらい高い値段になってしまうので、通常は普通の油に溶かした状態で売られています。従って、見た目には油脂なのか精油なのかは分かりません。
そのような中でアーモンドを絞った油(アーモンドオイル)は前者の油脂です。他の油を加えることなくアーモンドだけから取り出された油です。このアーモンドオイルは歴史的にも古くから使用されており、中国では周や秦の時代の医学、古代インドではアーユルヴェーダ(インド伝統統合医学)などで使用された記録があります。
また、グレコ/ペルシャ(現在のアフガニスタンやイランを中心とした地域)の医学学校ではアーモンドオイルは乾癬や湿疹などの乾燥した皮膚状態を治療するために用いられて来ました。
更に少し時代が下ると、アーモンドオイルは手術をした後に皮膚が盛り上がる(術後肥厚性瘢痕)のを抑えて、皮膚を滑らかにするために利用されるようになりました。これらの利用については、現代的な科学的なデータが不足していますが、永年の経験と臨床経験が現代の様々な利用を推し進めています(Complement Ther Clin Pract (2010) 16(1), 10)。
この他にも、アーモンドオイルは顔色および肌の色調を改善するために利用する試みが行われています。
アーモンドオイルは、食べるアーモンドとはまた異なった魅力が明らかになりつつあります。オレイン酸を中心とするアーモンドオイルは保存も容易く使いやすい皮膚用品です。機会があれば使ってみては如何でしょうか。
1961年福岡県生まれ。理学博士、医学博士。平成22年度文部科学大臣表彰され、わかりやすい解説に定評があり雑誌・テレビ出演も多い。