日本の人口はピーク時から100万人も減少していますが、世界の人口は増加を続けています。現在は73億人ですが、2050年には90億人を超えると推計されています。
この人口増加に伴って、生じるのが食糧問題です。国際連合食糧農業機関(FAO)によると、この2050年までに食糧を60%増産する必要があるのだそうです。何故、25%程度の人口増加で60%も食糧を増産しなきゃならないの?と思われるかもしれませんが、経済の発展に伴って、人々の食事は豪華になり、多様な食糧の要求が高まり、廃棄食品も増えるからです。
この食糧問題の解決の一つとして、ナッツが注目を集めています。ナッツの半分以上は脂肪です。すなわち少量で高いエネルギーを得ることが出来ます。また、炭水化物、タンパク質と言った主要栄養素だけでなく、ビタミン、ミネラルなどヒトの生存に欠かせない栄養をほぼ全て含むためです。加えて、真空状態なら常温で3年以上も品質に変わりがない保存容易性も世界的に注目される理由です。
遠い将来ではなく、現在でも、世界中の荒廃した地域で、ナッツの生産が推進されています。例えば、国際戦争とその後の内戦等で疲弊したアフガニスタンでは政府機関や国際機関の手によって、貧困を緩和し、枯渇した森林資源基盤を回復するためにナッツの植林が進んでいます(Environ Manage (2012) 49(4):833-45)。このナッツ生産は比較的早く商品作物が生育出来ること(概ね植林から3〜4年)、ナッツ価格が世界的に高騰していることなどから、住民に人気の復興プログラムになっています。また、古代よりナッツ生産が行われて来た地域であるため、外来種を持ち込む環境悪化もありません。
ナッツはこれからますます世界的な重要度が高まるのかもしれません。
1961年福岡県生まれ。理学博士、医学博士。平成22年度文部科学大臣表彰され、わかりやすい解説に定評があり雑誌・テレビ出演も多い。