ナッツの消費量が世界的に伸びている現在、ナッツの香りを楽しもうという流行も起こっています。ナッツの香りのコーヒーにナッツの香りの食用油。はたまた、ナッツを入れていないのにナッツの香りがするというパンやガーナ産のチョコレートはナッツの香りがすると話題になったりしています。
難しい名前ですが、ナッツの香りは2-アセチル-1-ピロリン、2-プロピオニル-1-ピロリン、5-メチル-(E)-2-ヘプテン-4-オン、2,3-ジエチル-5-メチルピラジン、3,5-ジメチル-2-エチルピラジン、2-フルフリルチオールなどがその本体です・・すみません、眠くなりますね。パンやチョコレートがナッツの香りがするというのはこれらの成分が、小麦やカカオに含まれるということです。ナッツの場合には、これらの成分は主に薄皮の部分に含まれますが、焙煎(ロースト)しないと出て来ないのです。焙煎とは熱を加えて炒ることです。熱を加えることで、これらの成分は揮発して私たちの鼻の奥にある嗅細胞まで届いて、脳でその香りを楽しむことが出来ます。また、焙煎することで、これら香りの成分がメイラード反応(糖化反応)を起して、更に複雑で強い香りになることも分かっています(例えば、J Agric Food Chem. 2015;63(35):7830-9)。香りを引き立たせる焙煎を行なうには、温度、時間、そして焙煎技術が必要です。それを出来るのがプロフェッショナルな職人の技と経験というものだと思われます。
1961年福岡県生まれ。理学博士、医学博士。平成22年度文部科学大臣表彰され、わかりやすい解説に定評があり雑誌・テレビ出演も多い。