本格的な夏を控えて、ナッツの消費も高まって行きます。このナッツのオレイン酸、ビタミンE、ポリフェノールなどの抗酸化物質がアルツハイマー病などの脳疾患に効果的であることが報告されています(PLoS Med. 2017; 14(3):e1002266)。そして、このアルツハイマー病に音楽が効果的であるという報告も目にするようになりました(Iran Red Crescent Med J. 2014; 17(1):e18052)。
この研究はまだイランの伝統的な医療を解析した結果に過ぎませんが、このように音楽と私達の身体の関係がこれから科学的に証明されていくでしょう。
例えば、スポーツです。2018サッカーワールドカップが始まりました。また、2020年には東京オリンピックも控えており、ここ数年スポーツの話題には事欠来ません。音楽を聴くと運動能力が上がるという報告が幾つも出されています(例えば、Med Sci Sports Exerc. 2015; 47(5):1052-60)。この研究では、20人の運動選手(22±4歳)が、「音楽あり」と「音楽なし」の2つの条件下で自転車こぎを行いました。この運動は4分間の休憩を挟んで4回行ないます。この結果、音楽を聴いた場合の方が聴かなかった場合よりも最高筋力と平均筋力で高い値が示されました。ただし、この音楽の効果は初回(1回目)が最も大きく、運動回数が上がって(4回目)疲れて来ると音楽の効果はなくなることも分かりました。
私などは、運動前の音楽は、感情を高ぶらせたり、運動への喜びを大きくする、あるいはリラックスさせるような効果があると考えていましたが、この研究ではこれらの効果はありませんでした。これから、表題のようにナッツと音楽の関係なども是非、研究してみたいものです。
1961年福岡県生まれ。理学博士、医学博士。平成22年度文部科学大臣表彰され、わかりやすい解説に定評があり雑誌・テレビ出演も多い。