スポーツすると、私たちの身体、特に筋肉は、
酸素と栄養素を利用し、二酸化炭素と老廃物を出します。
この二酸化炭素そのものは酸ではありませんが、
水に溶けることによって酸性になります。
前回書かせて頂いたように、人間の身体の体液はスポーツを行なったからといって、
すぐに体液が酸性になったりしません。
一方で、激しいスポーツによって筋肉の中が酸性になって、
筋肉疲労が続いてしまうことを避けるために、
スポーツ選手がスポーツの前後に重曹
(重炭酸ナトリウム;NaHCO3)を摂取することが多くなっています。
重曹と聞くとお掃除やお料理を想起される方が多いと思います。
英国で健常な16名の男性(23±2歳; 78.6±15.1 kg)が
体重1kgあたり0.1g、0.2g、あるいは0.3gの重曹を摂り、
その後、身体のpHがどのように変化するかの研究が行なわれました
(International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism (2016) 26, 445-453)。
この研究では、重曹を摂った人はすべて、
血液の中の重曹濃度およびpHは摂取後、有意に増加しました。
また、0.1gから0.3gまで摂取量が多ければ多いほど増加したのです。
つまり、スポーツ後の酸性の筋肉に重曹は有効である可能性があることになります。
しかし、この摂取後のpHの変動には大きな個人差がありました。
つまり、スポーツ選手は個々の体質やスポーツの内容に合わせて
重曹摂取のプロトコールを作成する必要があるのです
(なお、重曹は下痢などの副作用があるので注意が必要です)。
さて、このように薬品でもある重曹を使わなくても
より緩徐にアルカリ性を目指すことも可能です。
アーモンドはこのアルカリ性食品の代表です。
スポーツを行なう方はアーモンドを前もって摂っておくのも
筋肉の疲労回復のひとつの方法かもしれません。
1961年福岡県生まれ。理学博士、医学博士。平成22年度文部科学大臣表彰され、わかりやすい解説に定評があり雑誌・テレビ出演も多い。