我が国でも有名になりつつあるブラジルナッツ(Bertholletia excelsa)は、その約70%が脂肪であり、 マカダミアナッツ(約75%)よりは少ないもののヘーゼルナッツと同程度であるために、まろやかな油風味を楽しむことが出来ます。
このブラジルナッツは生産地アマゾンでは森林における最も重要な非木材林産物の一つです。
現在では、世界的な流行を受けて生産が追いつかなくなっています。
現在のブラジルナッツのアマゾンでの栽培は原住民の伝統的な育成に負っているが、 その維持と拡大は現代的な栽培が大きく貢献していると述べている論文もあります(PLoS One. 2014; 9(7): e102187)。
ブラジルナッツについてインターネット上で調べると、特殊な蜂が受粉を助け、それらの蜂は特殊な蘭によって繁殖するので、 ブラジルナッツはこれらの蜂や蘭と共生していると解説されています。
これを学術的に調べて見ると、実際にブラジルナッツ、カシューナッツ、アセロラなどの作物では、 生物学的に孤立した特殊な蜂が花粉の媒介者になることが分かりました(Genet Mol Res. 2013; 12(1): 830-7)。
これらは遺伝学的に8種類(ハプロタイプと言います)存在することが分かっており、 広範囲に収量を上げるためには確かにこの蜂たちを飼育したり、移転させる必要があるようです。
それでは、この蜂を育てるという蘭はどうでしょうか。
これについてはたくさんの論文を読んでみましたが、上記の蜂の育成に必ずしも特殊な蘭が必要な訳ではなく、 逆に、特殊な蘭の受粉には足が長い上記のような特殊な蜂が必要である場合があることが明らかになりました (例えば、Plant Biol (Stuttg). 2011; 13(4): 582-9)。
今回は完全に私の単純な疑問を追求した内容でした。すみません。 ブラジルナッツは美味しいから余計なことは考えなくて良いのかもしれませんね。
1961年福岡県生まれ。理学博士、医学博士。平成22年度文部科学大臣表彰され、わかりやすい解説に定評があり雑誌・テレビ出演も多い。