季節は春になりました。
屋外で少し身体を動かしたくなっておられる方もいらっしゃるのではないかと思います。
スポーツにとって筋力、情報処理能力などと共に、
体躯のバランスが非常に重要であることは直感的に理解して頂けるのではないかと思います。
体躯は、感覚器(眼や皮膚)からの情報を内耳と脳幹からなる前庭系で処理し、
最後は、各器官の筋肉に情報が伝えられて、バランスが保たれています。
よく、平衡感覚という言葉を使用しますが、感覚器を通して情報が集められ、
処理されるためにこのように呼ばれているのです。耳の奥、
内耳は特にバランスにとって重要です。
内耳の中の“半規管”の受容体は回転運動を、“卵形嚢”は水平(横)方向の直線運動を、
そして“球形嚢”は垂直(上下)方向の直線運動を受け持っています。
近年では前庭系を健康に保つことは、
ストレス軽減および(おそらくですが)感情的な幸福に有効であると報告されています。
この前庭系が感情の調節を行う辺縁系と密接に連携しているためです(J Nat Sci Biol Med. 2017;8(1):11-15)。
この内耳の機能がうまく働かない、
あるいは衰えてくるのには、生化学的経路異常、フリーラジカル誘発酸化損傷、
慢性炎症などが関わっていると言われています。
これら不具合に対して、現在では、薬だけではなく、
抗酸化物質などを積極的に利用していこうという試みも
多く行われています(例えば、Am J Otolaryngol. 2011;32(1):55-61)。
ナッツの持つ抗酸化効果についてもこれから研究されていこうとしています。
1961年福岡県生まれ。理学博士、医学博士。平成22年度文部科学大臣表彰され、わかりやすい解説に定評があり雑誌・テレビ出演も多い。