ナッツとは、主に硬い殻に包まれた種実類のことで、アーモンドやカシューナッツ、ヘーゼルナッツ、くるみなどの様々な種類があります。それぞれが異なる栄養素をもっていることから、食事を楽しみながら健康や美容も意識したい方にとって嬉しい食材です。
しかし、「ナッツの食べ過ぎは高血圧になる」という話を耳にしてやや不安を感じている方もいるでしょう。当記事では、ナッツと血圧の関係から高血圧の概要、さらに高血圧が気になるときに取り入れたい食品まで詳しく紹介します。
ナッツのみを極端にかつ大量に食べると、ほかの食材同様に健康リスクは高まりますが、多少食べ過ぎても高血圧になるとは限りません。なぜなら、一部のナッツ類には高血圧の予防につながる不飽和脂肪酸やカリウム、食物繊維、抗酸化ビタミン(ビタミンE)が含まれるためです。
それぞれの栄養素がもつはたらきは、下記の通りとなっています。
不飽和脂肪酸 | 血液中の中性脂肪やコレステロールを低下させることで、血液の循環をよくするはたらきをします。 |
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カリウム | 細胞内液の浸透圧を調節して一定に保つはたらきをするほか、ナトリウムを身体の外に排出しやすくする作用もあります。 |
食物繊維 | 整腸作用のほか、糖質やナトリウムを身体の外に排出する作用もあります。 |
ビタミンE | 抗酸化ビタミンとも呼ばれており、活性酸素のはたらきを抑える作用があります。ナッツ類のうち、クルミやアーモンド、ヘーゼルナッツはビタミンEを豊富に含みます。 |
出典:脂質異常症(実践・応用)
出典:食品データベース「種実類/ヘーゼルナッツ/フライ/味付け」
どの栄養素がどれほど含まれているかは、ナッツの種類によっても異なります。例えば、くるみ100gに含まれるカリウムは540mgとされる一方で、ピスタチオ100gには970mgのカリウムが含まれるとされています。
このように、ナッツを食べ過ぎても高血圧のリスクが高まるとは言い切れません。むしろ、血圧にアプローチする作用が期待できるでしょう。
高血圧とは、血液が動脈を流れる際、血管の内側に過度の圧力がかかっている状態のことです。一時的に血圧が高まるのは単なる「血圧が高い」状態ですが、正常値よりも高い血圧が慢性的に続く状態は「高血圧症」と言います。
そもそも血圧とは、心臓から全身に送り出された血液による「血管の内壁を押す力(圧力)」のことです。血管に大きな負担のかかる高血圧症を放置していると、血管の弾力性が失われて動脈硬化が進行し、糖尿病や心血管疾患、心臓病など死亡リスクのある合併症の引き金になってしまいます。
また、寒さを感じると交感神経が刺激され、血管が収縮するため、特に冬は高血圧に注意が必要です。加えて、冬は鍋物など塩分の多い食事が増えることも、高血圧のリスクが高まる要因の1つとされています。
高血圧症には、原因が明確となっている「二次性高血圧」と、原因が特定できない、もしくは様々な要因がかかわっている「本態性高血圧」の2つに分けられます。
それぞれの考えられる原因は、下記の通りです。
二次性高血圧 |
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本態性高血圧 |
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日本人の高血圧症の約8~9割は、本態性高血圧と言われています。前述の通り本態性高血圧は原因がはっきりと特定できないことが特徴ですが、そのほとんどが生活習慣に起因しています。
乱れた食生活や運動不足のほか、過度な飲酒・喫煙の習慣は、高血圧症や心筋梗塞、狭心症などを引き起こしやすいことが分かっています。生活習慣が発症に関与する症候群は、「生活習慣病」とも総称されています。
特に注意すべきは、肥満です。肥満の方は普通体重の方と比べて1.8~2.5倍ほど高血圧症を発症しやすいとされているため、バランスのよい食事と適度な運動を心がけましょう。
出典:神戸大学「肥満では脂質異常症に比べ糖尿病と高血圧のリスクが大きく増加」
しかし、たとえ規則的な生活習慣や食事を心がけている方でも、遺伝的体質や加齢によって高血圧症を発症するおそれがある点に注意が必要です。
高血圧症を予防するために、日本高血圧学会は1日あたりの塩分摂取量を6g未満に抑えるよう推奨しています。健康のためにも、日々の食事を見直して、塩分の少ない食べ物を食事に取り入れてみましょう。
出典:厚生労働省「日本における食塩摂取量の現状と減塩推進への課題~日本高血圧学会の取り組みを中心に~」
塩分の少ない食べ物には、野菜や果物、さらに豆類・ナッツ類が挙げられます。最後に、それぞれの具体的な食材と栄養成分について詳しく紹介します。
野菜は、食用となる植物の総称です。ほとんどの野菜には塩分が含まれていないほか、中でも下記の野菜にはカリウム、カルシウム、鉄分、食物繊維が豊富に含まれています。
●カリウムが豊富な野菜
・切り干し大根
・ほうれん草
・えだまめ
・にら
●カルシウムが豊富な野菜
・切り干し大根
・パセリ
・モロヘイヤ
●鉄分が豊富な野菜
・パセリ
・大根
・小松菜
●食物繊維が豊富な野菜
・切干し大根
・しそ
・モロヘイヤ
・ごぼう
出典:健康長寿ネット「ミネラル成分の鉄分の働きと1日の摂取量」
なお、市販のサラダドレッシングには塩分が多く含まれているため、減塩タイプのドレッシングか少量の塩と柑橘類の汁で味付けしたオイルをかけるのがおすすめです。
また、野菜スープなどの汁物を作るにあたっては、具沢山になるよう様々な種類の野菜を入れるのがおすすめです。具沢山にすれば汁の量が減るので味の濃さは変えなくても減塩になるほか、複数種類の野菜を入れることでそれぞれの栄養価を補い合えます。
果物とは、木や草に実る食用の果実のことです。ほとんどの果物は無塩で、調理しなくてもそのまま食べられるものが多いため調味料による塩分摂取がない点が魅力です。
高血圧対策や健康維持として取り入れたいおすすめの果物としては、下記が挙げられます。
●カリウムが豊富な果物
・干しあんず(ドライアプリコット)
・干しいちじく
・干しぶどう
●ビタミンCが豊富な果物
・アセロラ
・グァバ
・ゆず
干しあんず、干しいちじく、干しぶどうは、果物の中でもカリウムが豊富な食品です。また、ビタミンCが不足すると血管の壁がもろくなるため、アセロラやグァバ、ゆずなどのビタミンCが豊富な果物を食事に取り入れましょう。
ドライフルーツは水分が抜けており、同量あたりの栄養成分が干す前に比べて豊富なのが特徴です。例えば、生のブドウと干しブドウ(レーズン)を比較した場合、栄養成分は以下のように変わります。
栄養成分 | 生のブドウ(皮なし)の含有量(可食部100gあたり) | 干しブドウの含有量(可食部100gあたり) |
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エネルギー | 58kcal | 324kcal |
たんぱく質 | 0.4g | 2.7g |
脂質 | 0.1g | 0.2g |
炭水化物 | 15.7g | 80.3g |
食物繊維 | 0.5g | 4.1g |
カリウム | 130mg | 740mg |
ビタミンA | 2µg | 1µg |
ビタミンC | 2mg | (Tr)mg※ |
ビタミンE | 0.3mg | 0.8mg |
鉄分 | 0.1mg | 2.3mg |
※「(Tr)」は最小記載値の10分の1以上10分の5未満で、ごく微量であることを示します。
ただし、乾燥工程で壊れやすいビタミンCなどの成分は減少するため、ドライフルーツと生の果物の双方を取り入れるのがおすすめです。
また、基本的に果物は野菜に比べて高カロリーなため、「小腹が空いたときの間食として食べる」「制限中の食事後のデザートとして食べる」など、適量を心がけるとよいでしょう。
豆類とは、マメ科植物の種子の総称です。主に「乾燥豆」と「大豆加工品」の2つに大別されており、良質の植物性たんぱく質が豊富なほか、食物繊維、サポニン、ポリフェノールなどの機能性成分が多く含まれているのが特徴です。
出典:農林水産省「[History]小泉農学博士の大豆まめ知識 日本人と大豆」
乾燥豆と大豆加工品の代表例としては、下記が挙げられます。
乾燥豆 |
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大豆加工品 |
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特に、大豆加工品の中でも蒸し・ゆで大豆や挽きわり納豆、糸引き納豆にはカリウムが含まれており、塩分の排出を促す働きに期待できます。
しかし、大豆加工品は商品によって少量の塩分が含まれているため、食べ過ぎに注意したり食塩無添加の商品を選んだりすることがおすすめです。
ナッツ類とは、硬い殻に包まれた植物の種子や果実の総称です。ナッツ類を使った商品には様々なタイプがありますが、食塩無添加の商品を選べば塩分を控えつつおいしくナッツを食べられます。
ナッツ類の代表的な種類としては、下記が挙げられます。
ナッツの中にはカリウムやカルシウム、マグネシウム、鉄分、食物繊維のほか、不飽和脂肪酸やビタミンEが豊富に含まれているものもあります。しかし、その含有量はナッツの種類によって大きく異なることも覚えておきましょう。
出典:食品データベース「種実類/ヘーゼルナッツ/フライ/味付け」
出典:食品データベース「種実類/マカダミアナッツ/いり/味付け-01.一般成分表-無機質-ビタミン類」
出典:食品データベース「種実類/ピスタチオ/いり/味付け-01.一般成分表-無機質-ビタミン類」
出典:食品データベース「種実類/カシューナッツ/フライ/味付け-01.一般成分表-無機質-ビタミン類」
小腹が空いたときの間食としてそのまま食べるのはもちろん、砕いたりペースト状にしたりして料理に混ぜると、食感や風味が増してよりおいしく食べられます。
「ナッツの食べ過ぎで高血圧になる」という噂もありますが、多少の食べ過ぎで高血圧症を発症するとは限りません。むしろ、ナッツにはカリウムをはじめとしたミネラルや食物繊維、不飽和脂肪酸、抗酸化ビタミンが含まれていることから、血圧にアプローチする作用が期待できます。
しかし、どの食材でも言えるようにナッツの食べ過ぎは健康リスクにつながります。そのため、高血圧症が気になる方はナッツだけでなく野菜や果物、豆類など塩分が少ない食材も組み合わせながら、バランスのとれた食事を意識しておきましょう。
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