栁川かおり
医師/料理家
映画や絵本の中に出てくるお料理は、時に無性に惹かれてしまう。文章でも挿絵でも映像でも。お料理そのものにプラスαでいろんな思いが加わって、想像がどんどん膨らんだ時、ものすごく食べてみたくなるのだと思う。少し前にみたのは、まさにそんな感情が湧いてくる映画。小さな農村で自給自足の生活をする女性が主人公。森の緑と青い空の風景がとってもキレイで癒されて、季節ごとに作るお料理は、どれもシンプルだけど丁寧に作られていてとっても素敵。使う食材は、畑で採れた野菜、田んぼのお米、山で拾ってきたクルミ。そのクルミで作るクルミご飯は、稲刈りシーズンのまさに今が旬のレシピ。映画ではクルミを庭に埋めて殻が黒くなるまで少しおいてから、固い殻を金槌で割って実を取り出すという作業から。この手間をかける時間が余計に美味しさを増す気がするのだけれど、実際に自分で作るとなると、殻から出した生クルミを使うことにはなる。でも、採れたてを現地で充填パックした生クルミなら、新鮮さはそのまま。だいぶラクをしているけれど、採れたて気分を楽しめる。
映画ではこれを丁寧にすりつぶしてからお米に混ぜて炊き込んでいたけれど、クルミの食感が好きなので少し粗めに刻むだけに。お鍋にお米と水、調味料を入れてざっと混ぜたら、上に刻んだ生クルミをたっぷりのせて炊くだけ。
炊き上がったクルミご飯は、何とも香ばしい色。早速映画にならってせっせとおにぎりを作る。普通に器に盛って食べるのと、おにぎりにするのとでは、同じごはんでもなぜだか美味しさが違う。できたてをひと口食べてみると、素朴な見た眼とは裏腹に、クルミの香ばしさがドンとくる、しっかりインパクトのあるごはん。クルミのオイルのおかげで、噛むたびにコクが増す気がするのです。
クルミの形を残したのは、私的には大正解。しっかりよく噛むし、栄養価はもちろん満点なので、体を整えたい人にも最適なのでは。
映画のごはんって、やっぱりいいな。
2児のママ。出産を機に2011年より料理ブログを開始。シンプルな料理をより美味しく!をモットーに、まいにち食べても飽きないような「おうちごはん」を目指す。2012年日本テレビ系「ヒルナンデス!」内の史上最大の家庭料理コンテスト「レシピの女王シーズン2」にて優勝し、初のレシピ本を出版。
和食料理人である父の影響により、幼少から実家店舗で料理の基礎を学び、現在も料理家の仕事と両立して和食料理店に立ち腕をふるう。食に関する9つの資格を有しており、企業のレシピ開発やTVなどのメディアでも活躍中。トライアスロンの国内大会では年代別優勝するほどの実力で「食✕スポーツ」の普及活動も精力的に行っている。