栁川かおり
医師/料理家
娘が保育園とか小学校低学年くらいの頃のひな祭りは、薄焼き卵でお寿司をくるんで、うずらの卵で頭を作った、「ひな人形寿司」が定番でした。元々は、私が小さい頃に母が作ってくれていたもの。昔は今のようにキャラ弁もなかったし、そもそもキャラクターを作ることも全くなかった母でしたが、なぜかひな祭りの日だけは別。もう何十年も昔のことなのに、今でも覚えているなんて、よほど印象深かったのかもしれません。そのせいか、ひな祭りのごはんは、いつもとは違う特別な華やかさが欲しいと思ってしまう。たとえばお稲荷さんなら、断然オープン稲荷。上に菜の花や筍、塩漬けの桜などなど。春の食材もたくさんのせたら、一気にひな祭り仕様。でも、こういう見た目重視なものを作るときは、気を付けないといけないことがあります。小さい頃は見た目の華やかさがあれば、それだけで喜んでくれた娘も、大きくなるにつれて味にもうるさくなってきたのです。味もちゃんと工夫しないとね。
おこわや太巻きに、くるみを入れるのが好き。ごはんとくるみは意外に相性がいいのです。なのできっと稲荷寿司にも合うはず。そう、この稲荷寿司。実は甘辛く煮たくるみが入ったくるみ稲荷。
塩と油が不使用のくだものやさんシリーズのくるみは、そのまま食べることはもちろん、お料理に使うのにも向いているのです。醤油とみりん、砂糖で煮詰めた、くるみの甘辛煮はこれだけでもご飯のおともになりそうだけどね。
半分を細かく砕いて酢飯に混ぜて、くるみ入りの酢飯に。これを油揚げに詰めたらくるみ稲荷に。カリッと甘辛のくるみがアクセントになったお稲荷さんは、普段用ならもちろんこれで十分。
だけど今回はひな祭り用。残しておいたもう半分のくるみで最後の仕上げ。くるみの形がキレイに残っているから、トッピングするとより引き立つのです。菜の花の緑や錦糸卵の黄色、さくらのピンクと並べました。
これならきっと、見た目も味も満足してくれるかな。
2児のママ。出産を機に2011年より料理ブログを開始。シンプルな料理をより美味しく!をモットーに、まいにち食べても飽きないような「おうちごはん」を目指す。2012年日本テレビ系「ヒルナンデス!」内の史上最大の家庭料理コンテスト「レシピの女王シーズン2」にて優勝し、初のレシピ本を出版。
和食料理人である父の影響により、幼少から実家店舗で料理の基礎を学び、現在も料理家の仕事と両立して和食料理店に立ち腕をふるう。食に関する9つの資格を有しており、企業のレシピ開発やTVなどのメディアでも活躍中。トライアスロンの国内大会では年代別優勝するほどの実力で「食✕スポーツ」の普及活動も精力的に行っている。